<aside> ▫️ 「※写真はイメージです」は、画像生成AIモデルの一つであるStable Diffusionを用いて生成した画像と、それらを模倣して撮影、編集した写真を対比させた作品である。本作品では、代表的な観光地である”Enoshima”をAIに入力、生成した画像に対し、実際の江ノ島で撮影を行なった。 それぞれの場所にはその場所を想起させるモノや雰囲気がある。海があり、青い空があり、神社があり、ライトアップがされる。観光地によくある「わかりやすい特徴」は、この場所をこういうふうに消費したい、という私たちの欲望の裏返しでもある。一方、その場所を歩いている時ふとどうしようもなくその場所らしさを感じることもある。観光客の多さ、路地の狭さ、大きな観光案内板……それらはノイズ的でカメラを向ける対象にはならない「わかりにくい特徴」かもしれないが、間違いなくその場所らしさの要素である。 AIによって生成された画像は現実を写しているのではなく、現実を写した膨大なイメージの情報を反映させたもう一つメタの「イメージ」であり、そこには意識的なものも無意識的なものも潜在している。AIによって生成された画像は、私たちの欲求、あるいは無意識に引っ張られる何か、を析出しているのだ。 実際に江ノ島についてAIは現実と乖離を引き起こしたり、あるいは逆に現実のある側面を拾い上げたりする。赤い建築物、青い海、にこやかな顔、木、少し不自然なポーズ、高い彩度……AIによって可視化された「イメージ」とそれにかぎりになく近づけた現実の写真を見比べると、そこには過度に演出された部分と、比較しなければ気づかないような共通点との両方があることに気づく。 また、作成された二つのイメージはそれぞれInstagramに投稿され、位置情報と紐付けられる。インターネットにこれらのイメージを戻し、人の目に触れ、再び生成AIの学習データになり得る状況を作り出す。 現実に先立つ「イメージ」として生成された画像と、その後を追って模倣した写真。その狭間でイメージへの私たちの欲望と無意識について考える。
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